Story

2026.07.22

「GT-Rを全バラシできる」。その一言から始まった、若きメカニックの頂点への挑戦。

群馬日産の中でも最大規模を誇るKit-R太田。若手からベテランまでが活発に動き回るピットの熱気の中で、黙々と車に向き合う若きメカニックがいる。入社5年目の彼だ。

彼は若手整備士の登竜門である「全国日産ブロックサービス技術大会」の関東ブロックにおいて、見事「若手TS(テクニカルスタッフ)部門優勝」という快挙を成し遂げた。

幼少期の純粋な憧れを胸に、最短ルートで技術の世界へ飛び込んだ。大きな挫折や重圧を乗り越え、彼が目指す「真のプロフェッショナル」の姿とはーー。

K

Kさん

群馬日産自動車株式会社

Kit-R太田 整備士

自動車大学校1級課程を修了後、2022年に群馬日産自動車Kit-R太田店へ入社し、現在5年目。車検・点検から一般修理、重整備・故障診断まで幅広く担当する。4年目には日産サービス技術大会 関東ブロック・若手TS部門で優勝を果たした。

1. 少年の心を奪った憧れの背中。一直線に目指した整備士の道

物心ついた時から、彼の手にはいつもトミカがあった。車への情熱は、中学生の時に決定的な目標へと変わる。日産車に乗っていた両親に連れられて店舗へ点検に行った際、一人の整備士と話す機会があったのだ。

「その整備士の方が、『俺はGT-Rを全バラシ(全て分解)できるんだよ』と教えてくれたんです。中学生だった自分にはそれがたまらなくカッコよくて、『自分もこうなりたい!』と強く思いました」

 

その憧れの整備士は、今も群馬日産に在籍し、彼の目標となっている。GT-Rの言葉に心を奪われた少年は、太田工業高校から太田自動車大学校へと進み、迷うことなく整備士への道を駆け上がっていった。

2. 「やってこい」と笑顔で送り出してくれた仲間。関東大会優勝の裏側

入社4年目の時、彼に転機が訪れる。上司から技術大会への出場を打診されたのだ。店舗の中でも優秀な社員しか候補に選ばれない名誉ある舞台。

「推薦を受けた時は、日々の自分の努力を評価してもらえたことがシンプルに嬉しかったです。その期待に絶対に応えたいという思いで練習に打ち込みました」

 

しかし、大会に向けた特訓は過酷だった。関東大会の2週間前からは通常業務から完全に離れ、研修センターで水曜から日曜まで大会用の知識と実技を叩き込む日々。店舗を1ヶ月近く空けることへの申し訳なさもあったが、仲間たちの言葉が彼を救った。

「店舗の皆が『やってこい!』と笑顔で送り出してくれたんです。指導担当の上司も、自分の業務が忙しい中で1ヶ月間つきっきりで教えてくれました。結果として個人の優勝だけでなく、一緒に練習を頑張ったメンバーと団体準優勝も獲れた。本当に嬉しかったです」

3. 全国の壁、そして現場の重圧。打ち砕かれた「天狗」の鼻

関東王者として意気揚々と挑んだ、横浜アリーナでの全国大会。会社が手配した大型バスで店舗の仲間や同期が応援に駆けつける中、彼はそこで「全国の圧倒的な壁」を目の当たりにする。

「関東大会で優勝して、正直少し天狗になっていた部分があったんです。でも、全国に行ったら『こんなにすごい人たちがいるのか』と衝撃を受けました。自分の無力さを痛感した瞬間でした」

 

思えば、入社1〜2年目の時もそうだった。学校で知識を詰め込んできた自信は、現場のリアルな重圧の前にあっけなく崩れ去った。

「学校の勉強と現場は全く別物でした。特にお客様を相手にする現場では、お客様の『大切な時間』と『責任』を預かっているというプレッシャーが常にあります。毎日が勉強で、必死に食らいつく日々でした」

4. ユニットは「脳」、添加剤は「栄養ドリンク」。徹底してお客様に寄り添う

数々の経験を経て、彼の中には「プロの整備士」としての確固たる流儀が形成されていった。限られた時間内で完璧に直すことは当たり前。彼が最もこだわっているのは、「お客様への伝え方」だ。

「専門用語をそのまま並べても、お客様には伝わりません。だから私は、例えば添加剤なら『栄養ドリンク』、ユニットなら人間でいう『脳』といったように、身近な例えを使ってわかりやすく説明するようにしています。お客様を不安にさせず、納得していただくことが何より大切ですから」

 

彼にとっての「プロの技術」とは何か。それは、あの日GT-Rの話をしてくれた先輩や、今職場で尊敬している先輩の姿そのものだ。

「尊敬する先輩は、難しい整備の相談をすると、状況を聞いただけで即答で『ここを調べてみて』と原因箇所を予測し、的中させるんです。車の細かいところまで知り尽くし、『何でも知っている、何でもできる』。それが私の思う本当のプロフェッショナルです」

5. 「何でもできる」整備士へ。次世代へ繋ぐ技術と情熱

後輩の指導にあたる際、彼は自分が新人の頃に先輩からしてもらった「見る→一緒にやる→任せる」というステップを徹底している。自分が受け取ったバトンを、そのまま次の世代へと繋ぐためだ。

そんな彼の視線は、すでに次の高みを見据えている。

「関東大会の『若手TS部門』で優勝できたので、次は全国優勝を目指したいです。そして若手TSだけでなく、TA(テクニカルアドバイザー)競技や、ベテランTS部門も制覇して『3冠』を獲るのが目標です。将来的には、どんな高難易度の整備でも行える保証技術課のプロフェッショナルになり、新人研修などにも挑戦してみたいですね」

 

憧れの背中を追いかけた少年は今、自らが誰かの「憧れの背中」となり、誇り高きエンジニアとしての道を力強く歩み続けている。

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